2012年5月28日月曜日

HCD-Netセミナーin名古屋2012 (第2回) |オブザベーション


5/26、今年のHCDセミナーの第二回目が開催されました。今回はオブザベーション。オブザベーションとは「観察」のことで「ユーザーをよく見ましょう」という多くの仕事の基本となる部分を学びます。行動観察という手法も少し前にTV等で取り上げられていましたが、とにかくお客さんをしっかり見ると沢山の情報を得られるといったものですね。

このオブザベーションに関するセミナーは昨年も受講しました。ただ、その時はHCDに関するセミナーへの参加が初めてだったこともあって、とにかく右も左もわからず、どこにゴールを設定していいかすらわからなかったのですが、今年は何をやるかわかっていた(忘れてた部分も多かったですが。。)ので、すごく余裕を持って望めました。

やはりこのセミナーは続けて何度か受講しないと意味が無いように思います。とくに1年目は存在を知るくらいが精一杯かと。その後、どうやって勉強するかがまた問題になってきますが、とにかく1度出たからといって理解できるような類のものではなく、少しずつ理解を深めてHCDプロセスを業務に「少しでも」取り入れるのを「普通」にすることが、地方にいて専門教育を受けていない僕にとっては、ひとつの到達点なのかもしれないと思っています。

業務に取り入れづらいものをどうしてお金を払ってまで受講しているのかというと、これ今年になってわかったのですが、いろんな本を読んだりするとHCDのセミナーで触れたことが結構出てくるんです。そこの理解力が飛躍的に向上しているのは感じます。
それと、普段複数人でブレストすることが少ない僕にとっては、その練習にもなっています。ブレストって意外と難しくて、慣れないと議論が活発になってこなかったりするんですが、このセミナーに出ている人にとっては「壁に向かう」「ポストイットを使う」ということが当たり前になっています。これは相当大きい。

これらを社内に持ち込むにはまたもう一つ超えなきゃいけない壁があるとは思いますが、それは少しずつ克服していこうと思います。

HCD概論(2)|小林先生

まずは、愛知工業大学の小林先生が「HCDってなによ」ってことについてお話下さいます。今回はユーザビリティ評価について。ユーザビリティ評価には色々あって、その中でも観察法についてお教え頂きました。
ユーザビリティラボについてやテストの種類について、高速道路SAのゴミ箱の例、観察から分かることがたくさんあるよ、といった内容をお話下さいました。

以前業務で、WEBサイト制作時に観察法っぽいことを取り入れたのですが、ユーザーは制作者の思ったとおりには全然使ってくれなくて、びっくりしたことがありました。やはり使うモノを作る場合、ユーザーテストはどこかで取り入れないといけないと思います。僕の場合はWEBやPCに強くない人を選んで、公開前のサイトを使ってもらう程度ですが、やらない時と比べると、それだけでも十分効果が得られます。時には家族にお願いしたりもします。これをやって画面設計を変えることもありますし、納期の問題からラベリングの変更でなんとかする、ということもありました。

オブザベーションワークショップ|浅野先生
そして、オブザベーションのワークショプに入っていきます。今回は「カップ焼きそば」を使います。昨年はゼリーを使いました
何をするかというと、カップ焼きそばを開けるところから食べ終わってゴミとして捨てるところまでを細かく観察して、問題点やそれに対する改善案を抽出していき、最終的にパッケージを改良するアイデアを作る、ということをします。

このカップ焼きそば、名古屋ではそんなに見かけないメーカーのもので、普段使い慣れている円形のものと比べると、問題点が満載。そんなことは普段は意識しないので、どこがどうとかはわからないのですが、オブザベーションの手法を使うことによってどこが問題なのかということがはっきりとあぶり出されてきます。
実際に焼きそばをたべるところを観察されるのは3人。これは業務で行うには少ない数字だと思いますが、あくまでワークショップなのでこれでも時間はギリギリです。
僕も食べた一人なのですが、大切なのは焼きそばを作って食べる間、思っていることをすべて口にすることです。これを「発話」というのですが、この「発話」を拾っていくのがものすごく大切です。発話の中にこそ改善のヒントが隠されています。加えて、今回はUXマップを作成しました。
時系列に並べた、焼きそばを食べる際の「作業ステップ」「発話」それらから推察される「パッケージの問題点」「UXマップの起伏」から改善点を絞り、そこに集中して改善案を考えます。改善するポイントを絞ることも大切で、これをやらないと日本人の大好きな「足し算」のデザインになってしまうとのこと。たしかにあれもこれも改善するよりは、本当に問題となるところにフォーカスして考えたほうが、よくなりますよね。
また、ユーザーは「楽に」できることを求めているわけではないということも教えて頂きました。要は何でも「楽に」「簡単に」できる事ばかりを考えてしまうと、良いUXは提供できない可能性があるということだと思います。

僕達のチームは、UXマップが3人とも落ち込んでいる「3分待つ」「食べている最中」に絞って改善案を検討して行きました。ここで気づいたのですが、「主題はパッケージの改善」なのに、麺が1分で出来ればいいとか、そういう方向に話がいってしまいがちということです。しかし、2つの課題に対してパッケージの改善で何ができるかを考えないといけないので、そちらにチームの思考が行ってしまいそうになった時に、軌道修正することを心がけていました。

「3分待つ」ことがなぜストレスなのかを観察の結果から推察すると、とにかく手持ち無沙汰になるんですね。今回は他の情報(テレビや本など暇つぶしの道具)に接することが出来ない状況なので特殊ですが「ある一定の状況下」というのも大切な条件ですので、今回はこれでよいのだと思います。

また、なぜ「食べている最中」にUXが落ち込むかというと、「このまま食べていくと「かやく」が残るね。。。。」という思考が働くことが、発話から分かります。麺とかやくを上手に混ぜながら食べられないのです。

この二点を改善するために考えたことは以下のとおりです。
・「3分待つ」:フタに面白いコンテンツを掲載する。特に3人とも携帯電話(スマホ)で時間を計っていたので、スマホを利用したコンテンツが良いのではないかと話していました。
・「食べている最中」:まず手で持ちやすいように、もっと細い形状にしようということと、容器内側の底面の形状を球面に近い形にしようというアイデアを出しました。要はかやくと麺を混ぜやすい形状にしようということです。

この2つのアイデア、スゴくありきたりだと思いますが、ワークショップではこれでいいと思います。良いアイデアを出すワークショップではなく、オブザベーションの手法を通じて、実はHCDのプロセスをざざっとひと通り経験することが目的のワークショップですし、浅野先生が仰っていたのですが、とにかく終わらせることが大切だということです。

このあと、3人へのインタビューから導き出した簡単なペルソナを造り、パッケージの改善案とその利用状況を示した4コマ漫画を作成して、プレゼンです。

昨年と比べて周囲が見えていたのと、チームのメンバーにも恵まれたこともあって、スゴく楽しんで出来ました。とにかくワークショップは楽しいです。楽しんだだけで終わらせてはいけないのですが、楽しくないと学ぶ気も失せてしまうので、よしとすることにします。

次回はストーリーテリングについてのワークショップです。ものすごく興味がある分野なので、非常に楽しみにしています。

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