2012年7月23日月曜日

スマートデバイスにおけるUX/UIデザインワークショップ in名古屋

先日友人の主催するセミナー&WS、「スマートデバイスにおけるUX/UIデザインワークショップ in名古屋」に参加してきました。

場所は、今をときめく地元企業のAチームさん。とても素敵なオフィスで、びっくりしました。

そして講師は株式会社ワンパクの阿部さん。阿部さんによるセミナー&WS参加は二度目で、前回は昨年行われた「コミュニケーションデザイン」に関するワークショップでした。その時の資料は今でも何らかの企画をする時に目を通させて頂いてます。

さて、今回のお題は「スマートデバイスにおけるUX/UIデザイン」。UX(ユーザーエクスペリエンス)とUI(ユーザーインターフェイス)の関係性などはツイッター上での議論も散見します。非常に抽象的な部分が多いトピックなのがその原因かと思いますが、僕自身は色々な方の意見やセミナー参加などから結構すっきりと(自分なりに)理解できていて、それ自体よりはその設計方法に興味が移っています。

UXD(ユーザーエクスペリエンスデザイン)となるとこれホントに難しい気がします。そもそもUXDとは、顧客のUXを追求しているだけでは全然ダメだと思っていて、大前提として企業に利益をもたらさなければいけないわけです。要はビジネスニーズありきですよね。しかも僕らは何でも出来る巨大企業に所属してるわけでも無いですし、それぞれの得意分野がある中小零細企業に所属しているわけです(※仲間のなかには比較的大きな企業に勤めている方ももちろんいますが)。そんな僕らにも出来るUXDのやり方ってものがもう少し整理できればいいなと思っていました。

人が何かの気持ちを持って、何らかの行動を起こし、その結果様々な体験をする。それは瞬間瞬間のものもあれば、その瞬間を累積したものや、行動に移す手前の気持ちや、数年後に何かのキッカケで振り返ることもある。これらがUXだと思います。これを例えばWEBや広告を生業としている受託企業の僕らに設計できるのでしょうか。もうすでにそれはWEB制作会社だったりの仕事の範疇では無いのでは、と。

やはり(当たり前かもしれませんが)すべての発信は依頼主の企業が主体となってして行かなければいけない気がします。要は依頼主が自社製品やサービスによる良いUXを顧客に提供していくことを決める、ということです。そこに、広い知識を持ちつつ(WEB制作だったりの)どこかのパートに特化した我々のような企業がサポートする形でコミットしていく。

で、実は僕は、そんなこと(UXD)が出来る企業になる必要があるのかどうか、という視点も必要な気がします。もちろん知識や経験としては持っておくべきだと思いますが、「全体のことは他の企業にお任せして、クリエイティブのところで貢献します」とか、全然有りじゃないでしょうか。

UXについての知識自体は共通言語として共有しつつ、UXDはそれが得意な会社がやればよいのでは?というのが今のところの感想です。そうしないと特に地方においては、すべての企業がすべての能力を備えようとする。またしばらくすると考え方が変わるかもしれませんが、いまはそんな感じで考えています。

その他アフォーダンスや対応づけのお話もしていただきました。これらは阿部さんからの資料の提供を待って、再度まとめたいと思います。


ワークショップについて

ここからはワークショップについてまとめます。今回のワークショップは某有名音楽教室(子供向け)を題材として、その購入検討者(新規・既存)にWEBを通じてどのような体験を提供し、最終的に契約まで持っていけるかというものです。

こういったワークショップで大切なのは「下手でもいいから最後までやる」だと思いますので、品質はそれほど優先せず、経験することを大切に進めました。

ペルソナ作成

まず、対象となるひとのモデルを共有するため、ペルソナをつくります。今回はペルソナ作成は主目的ではないので、割りとザックリ妄想混じり、メンバーの友人や家族を思い浮かべながら意見を出し合い、それを二人のペルソナに落としこんで行きました。

ここで思ったのが、ペルソナ作成が主目的ではないワークショップにおいては、主催者側がペルソナを提供するというのも有りなのではないかということです。僕自身はHCDセミナーでペルソナ作成を経験していますが、とてもじゃないですが普段の業務でペルソナなんて作れないなーというのが実感です(※妄想ペルソナは除く。というかそれはペルソナではないですよね)。まずはしっかりとした数のインタビューやログの解析をして、それを適切な手順を踏んで作っていくものだと思うのです。もしそうでない、簡単にそれなりの精度のペルソナを作る方法があればぜひ習得したいです。

また、ペルソナ作成が主目的ではないワークショップにおいて参加者がペルソナを作ることに意味があるのだとすれば、それはそこを理解した上で取り組みたいです。


利用シーン・ユーザーシナリオ作成

次にそのペルソナがWEBサイトを利用するシーンと、そのシーンで想定できるシナリオを作成します。ここは模造紙を壁に貼る、いつものブレスト方法を使いました。やはりHCDセミナー受講者を中心として「これが一番やりやすい」というのが浸透してます。

まずシーンをチームで検討。「こんなのもあるんじゃない?」とか言いつつペタペタとポストイットに書いて貼っていきます。今回は「家で」「移動中」「外出先」としました。

次にシーンに対するシナリオを作っていきます。ここでも細かい事象レベルに分けて考えて行きました。「テレビを見てる」「電話中」「PCに向かってる」などの次に「○○のような番組を見て」「○○と電話をしていて」「○○のサイトを見ていて」という感じでどんどん進めていき、さらにそこにユーザーの感情を加えていきます。


ユーザーニーズ洗い出し

ある程度シナリオが出揃ったら、何らかの感情を持ったユーザーが求めるコトを書きだしていきます。「最寄りの教室が知りたい」「適したコースを知りたい」「OB・OGがどんな人なのか知りたい」などです。

コンテンツ・機能の洗い出し

そして上記のニーズを満たせる、WEBコンテンツを検討していきます。今回は時間もそれほどなかったので絞って考えてることにしました。その絞ったニーズとは「ウチの子供に向いてるコースは何?」「教室に通うと将来どんな人に成長するの?」というものです。

それらに対して、「こんなコンテンツやシカケを作ったらニーズを満たせて、コンバージョンにつながるんじゃないか?」というものをチームで相談してアイデアを出し合いました。

コンセプトダイアグラム作成

次に、ユーザーの気持ちや行動を一枚の紙に落としこんで「コンセプトダイアグラム」を作成しました。

これはエクスペリエンスマップに似た機能を持っていると思います。他の参加者の方が仰っていましたが、エクスペリエンスマップは作るの大変だし、WEBでどうこうというよりももっと大きな動きとして考えないと使えないと思う、ということでした。

その点、この「コンセプトダイアグラム」はもう少し小さいスケール感でも使えるのではないかと思いました。ユーザーの気持ちの動きを含めて適切にコンテンツを提供することで、企業の目的である「契約」につなげていく一連の動きを表現できたのでは無いかと思います(何度も言いますが、クオリティは問いませんw)。

ただ、あとから振り返るともう少し前後の気持ちから拾い上げたほうが良かった気がしています。サイトに来る前の気持ちから、契約後の気持ちまでを描いていくのがUXDではないのかと思いますので。

ペーパープロトタイプ作成

今回は時間が無かったのでここは割愛しました。ですので、実はUIに関してはあまり触れることができませんでしたね。しかし、スマートフォンのようなデバイスのデザインに関しては書籍も沢山出ていますし、WEB上にも情報が沢山あるので、それ程重要ではないと思っていました。

相互評価・観察

最後に、全員で各チームの模造紙の前に移動して、プレゼンテーションです。僕らのチームは、久々に僕がプレゼンしました。

僕個人の感想として、すべての成果物に対して説明を細かくしても聞いてもらえないと思ってますので、細かい部分は相当端折り、それより企画のキモの部分を感情を込めて説明することを意識しました。まあそれなりの発表が出来たのではないかと思っています。

それとあとから少しだけ後悔したのですが、プレゼンに「ストーリーテリング」の手法をエッセンスだけでも取り入れればよかったと思っています。こんなチャンス無かったですよね。。。残念。

僕は最近色々なワークショップに参加していますが、ワークショップの良い所は短時間でお手軽に講師の持っている経験をエッセンスお取り込むことが出来るというところだと思っています。品質は、こんな短時間でいいものができるわけがないです。ただ、いいものにしようとするプロセスは非常に重要だと持っています。でも優先すべきは最後までやり切ることですよね。そこを意識しています。だから実は「やりたいようにやって下さい」は僕的には必要ではなくて、今回であれば阿部さんの「僕はこうやっているから、今回はこのやり方でやりましょう」という方が良かったと思います。それがとても知りたかったです(エッセンスだけでも)。それをいかに自分のやり方にしていくかは参加者次第だと思いますし。

それに加えて、ブレスト/ファシリテーション/プレゼンテーションの練習だと思っています。本当は毎回プレゼンしたいです。だけど、普段はちょっと遠慮しています。

懇親会→二次会→三次会

すべてのチームの発表が終わって、懇親会です。この懇親会がスゴく良かったです。実は参加者の中に株式会社ツルカメの代表:森田さんが(なんと!)受講者として参加されていたのですが、今回の講師の阿部さんと熱い話もありましたし、懇親会での前半は阿部さんとしっかりお話ができて、いろいろヒントを頂けました。

それにしても阿部さんも僕と2つしか歳が違わないんですよね。少しでも追いつけるようにこれからも修行するしか無いですね。。。頑張ります。

2012年7月4日水曜日

HCD-Netセミナーin名古屋2012(第3回)ストーリーテリングワークショップ


先日、今年のHCD-Netセミナーの第3回目に参加してきました。
今回もまずは座学で小林先生のHCD概論を学び、その後はLINEで話題のNHN JAPANにいらっしゃった酒井さん(丁度退職と重なったそうです)による「ストーリーテリング」のワークショップが行われました。

HCD概論|小林先生(愛知工業大学情報科学部)
今回のHCD概論では、主にアフォーダンスと設計プロセスについて学びました。アフォーダンスに関しては、少しかじったことがある程度ですが、今回お話いただいた内容に関しては概ね理解できていました。そして続いてデザイン設計プロセスについてのお話をしていただきました。iPhoneのUSBケーブルの形状を例に講義を進めてくださいましたが、たしかにあの形状はユーザーフレンドリーではないですね。すごく抜きづらいというのは僕も認識していました。ここで焦点になってくるのは、優れたガイドラインを持つアップルがなぜこういうものを作ってしまったのかということですが、小林先生はその理由として

  • ターゲットを若者に絞っている
  • 不自由な体制での利用を考慮していない
  • 幹部の要求

上記を挙げられました。
僕は「幹部の要求」なのかなーと勝手に想像していました。製品は使いやすければ良いというわけではないと思うので、ところどころではデザインを優先する場面もあるでしょうし、アップルに関して言えばその傾向が強い気がしています。
そして、使いやすい製品を作る場合に必要なプロセスとして、

  • 合意形成のプロセスを徹底する
  • ターゲットユーザーを明確にして合意を形成しておく

といったことが必要になってくるということです。

ストーリーテリングワークショップ|酒井洋平さん
そして、ワークショップに入っていきます。UX-TOKYOで「ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング」の翻訳に関わられた酒井さんが進めてくださいます。

個人的にこのワークショップは非常に楽しみにしていました。僕は立場上、所属する会社の社長に稟議を通すこと、部下の指導をしなければいけないこと、またお客様に向けてプレゼンをしなければいけないことが多々あります。そんなとき、このストーリーテリングの技術を織り交ぜることで説得力が増すのではないかと思っていたからです。

しかし以前、アクアリングの平野さんが主催された「ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング」読書会に参加しましたが、正直あまりわかりませんでした。実はこの本は翻訳本ということと内容が抽象的なことで、ちょっと理解がしづらいところがあります。物事をストーリーにして話すと伝わるのは非常にわかります。しかし、そのストーリーをどうやって伝わるものにするのかというところがハラオチできないでいたのです。おそらくジャンルとしてもまだまだ始まったばかりのものということもあるのでしょう。いまいちメソッドが確立されていないように思います。

さて本題のワークショップについてです。今回は「飲み会の設定」「旅行の計画」「ソーシャル・ネットワーク」の3つからそれぞれのチームでお題を選び、ストーリーを組み立ていきます。

僕らのチームは「飲み会の設定」としました。飲み会の設定を通じて困ったことを抽出し、それを解決するアイデアを簡単にストーリーに組み込んで発表するといった感じです。

まず、インタビューで「ストーリーの断片(アネクドート)」を集めます。やってみて思ったのですが、このインタビューがやっぱり難しいです。今回もいわゆる「半構造化インタビュー」なのですが、聞き出したいことを明確にしていないと結局肝心なことを聞き出せないまま終わってしまいがちです。で、あとから振り返って「アレも聞けてない、これも聞けてない」となります。こうなってしまうと、後のステップである「ストーリーの断片」を選ぶときに、非常に難しくなってしまうと思います。

次にインタビューした内容を若干ストーリー仕立てにして発表していきます。そこにはインタビューから抽出した様々な「ストーリーの断片」が内包されていますので、それをみんなでポストイットに書き出して行きます。そして、ポストイットに書きだした「ストーリーの断片」をストーリーモデルのひとつである「英雄構造」に落としこんで行きます。
「英雄構造」とは、
【日常の世界】
【冒険へのきっかけ】
【はじまりと試練】
【冒険の世界】
【目的の達成】
【日常世界への帰還】
という流れの、ストーリー作りのフレームワークのようなものです。

ポストイットに書きだして英雄構造にあてはめた「ストーリーの断片」を選ぶ作業に入っていきます。僕らのチームは、まず似たような「困ったこと」をグルーピングして行きました。同じような内容のものをそぎ落とし、近い内容のものを近くに置いて、それぞれのストーリーを俯瞰しました。基本線はそれぞれが発表したストーリーなのですが、インタビューの不備から辻褄が合わなかったところを他のストーリーから補ったりもしました。

そうして英雄構造における
【日常の世界】
【冒険へのきっかけ】
【はじまりと試練】
【冒険の世界】
までができたので、今度は
【冒険の世界】
【目的の達成】
【日常世界への帰還】
を作っていきます。

【冒険の世界】とは、飲み会を設定するにあたっての障害となるようなものを、いかにして克服して目的にたどり着くかを描いていくものです。で、この【冒険の世界】を描くために不可欠なのは【目的の達成】というゴールの設定。主人公はどうなりたいのか、ということを最初に決めておかないと、ストーリーもヘッタクレもありません。
僕らのチームのゴールは「飲み会の開催」としました(当たり前だと思われると思いますが、これが大切だと思います)。

飲み会を無事開催するために、どうやって様々な「困ったこと」を乗り越えていくか。今度は個人作業でアイデアを練り、「困ったこと」を解決するサービスなり製品なりを考えていきます。ここは正直思いつきのアイデアレベルで進めます。アイデアを出すことが目的のワークショップではなく、ストーリーテリングをひと通り経験するワークショップですので。

で、なんとかひねり出したアイデアを加えた、「英雄構造」のストーリーをチーム内で発表していきます。それぞれなかなか面白いアイデアも出て、ストーリーも破綻していないものが発表されました。そして、チームから一人選んで全チームの前で発表し、酒井さんに講評してもらってワークショップは終了となります。

最後の発表の時に、サービスを軸にした、いわゆる「プレゼン調」に発表する方がいらっしゃったのですが、ストーリーとして語らなかった理由は何なのかが気になりました。どちらが正しいとかそういう問題ではないと思いますが、やはり主人公を置いたストーリーとして語っていただいたほうが感情も移入できるでしょうし、情景も浮かぶような気がしていました。

今回のワークショップでは、ストーリーの作り方が少しはわかったような気がしました。しかしインタビューはなかなか提案段階では取り入れるのは難しいかもしれないとも思います。そこで、酒井さんが仰っていましたが、WEBサービスのユーザーフォーラムなんかで「困った話」をかき集めるだけでも「アネクドート」にはなり得ると思いますので、今後のプレゼンから少しずつ取り入れていきたいと思っています。