2012年7月4日水曜日

HCD-Netセミナーin名古屋2012(第3回)ストーリーテリングワークショップ


先日、今年のHCD-Netセミナーの第3回目に参加してきました。
今回もまずは座学で小林先生のHCD概論を学び、その後はLINEで話題のNHN JAPANにいらっしゃった酒井さん(丁度退職と重なったそうです)による「ストーリーテリング」のワークショップが行われました。

HCD概論|小林先生(愛知工業大学情報科学部)
今回のHCD概論では、主にアフォーダンスと設計プロセスについて学びました。アフォーダンスに関しては、少しかじったことがある程度ですが、今回お話いただいた内容に関しては概ね理解できていました。そして続いてデザイン設計プロセスについてのお話をしていただきました。iPhoneのUSBケーブルの形状を例に講義を進めてくださいましたが、たしかにあの形状はユーザーフレンドリーではないですね。すごく抜きづらいというのは僕も認識していました。ここで焦点になってくるのは、優れたガイドラインを持つアップルがなぜこういうものを作ってしまったのかということですが、小林先生はその理由として

  • ターゲットを若者に絞っている
  • 不自由な体制での利用を考慮していない
  • 幹部の要求

上記を挙げられました。
僕は「幹部の要求」なのかなーと勝手に想像していました。製品は使いやすければ良いというわけではないと思うので、ところどころではデザインを優先する場面もあるでしょうし、アップルに関して言えばその傾向が強い気がしています。
そして、使いやすい製品を作る場合に必要なプロセスとして、

  • 合意形成のプロセスを徹底する
  • ターゲットユーザーを明確にして合意を形成しておく

といったことが必要になってくるということです。

ストーリーテリングワークショップ|酒井洋平さん
そして、ワークショップに入っていきます。UX-TOKYOで「ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング」の翻訳に関わられた酒井さんが進めてくださいます。

個人的にこのワークショップは非常に楽しみにしていました。僕は立場上、所属する会社の社長に稟議を通すこと、部下の指導をしなければいけないこと、またお客様に向けてプレゼンをしなければいけないことが多々あります。そんなとき、このストーリーテリングの技術を織り交ぜることで説得力が増すのではないかと思っていたからです。

しかし以前、アクアリングの平野さんが主催された「ユーザーエクスペリエンスのためのストーリーテリング」読書会に参加しましたが、正直あまりわかりませんでした。実はこの本は翻訳本ということと内容が抽象的なことで、ちょっと理解がしづらいところがあります。物事をストーリーにして話すと伝わるのは非常にわかります。しかし、そのストーリーをどうやって伝わるものにするのかというところがハラオチできないでいたのです。おそらくジャンルとしてもまだまだ始まったばかりのものということもあるのでしょう。いまいちメソッドが確立されていないように思います。

さて本題のワークショップについてです。今回は「飲み会の設定」「旅行の計画」「ソーシャル・ネットワーク」の3つからそれぞれのチームでお題を選び、ストーリーを組み立ていきます。

僕らのチームは「飲み会の設定」としました。飲み会の設定を通じて困ったことを抽出し、それを解決するアイデアを簡単にストーリーに組み込んで発表するといった感じです。

まず、インタビューで「ストーリーの断片(アネクドート)」を集めます。やってみて思ったのですが、このインタビューがやっぱり難しいです。今回もいわゆる「半構造化インタビュー」なのですが、聞き出したいことを明確にしていないと結局肝心なことを聞き出せないまま終わってしまいがちです。で、あとから振り返って「アレも聞けてない、これも聞けてない」となります。こうなってしまうと、後のステップである「ストーリーの断片」を選ぶときに、非常に難しくなってしまうと思います。

次にインタビューした内容を若干ストーリー仕立てにして発表していきます。そこにはインタビューから抽出した様々な「ストーリーの断片」が内包されていますので、それをみんなでポストイットに書き出して行きます。そして、ポストイットに書きだした「ストーリーの断片」をストーリーモデルのひとつである「英雄構造」に落としこんで行きます。
「英雄構造」とは、
【日常の世界】
【冒険へのきっかけ】
【はじまりと試練】
【冒険の世界】
【目的の達成】
【日常世界への帰還】
という流れの、ストーリー作りのフレームワークのようなものです。

ポストイットに書きだして英雄構造にあてはめた「ストーリーの断片」を選ぶ作業に入っていきます。僕らのチームは、まず似たような「困ったこと」をグルーピングして行きました。同じような内容のものをそぎ落とし、近い内容のものを近くに置いて、それぞれのストーリーを俯瞰しました。基本線はそれぞれが発表したストーリーなのですが、インタビューの不備から辻褄が合わなかったところを他のストーリーから補ったりもしました。

そうして英雄構造における
【日常の世界】
【冒険へのきっかけ】
【はじまりと試練】
【冒険の世界】
までができたので、今度は
【冒険の世界】
【目的の達成】
【日常世界への帰還】
を作っていきます。

【冒険の世界】とは、飲み会を設定するにあたっての障害となるようなものを、いかにして克服して目的にたどり着くかを描いていくものです。で、この【冒険の世界】を描くために不可欠なのは【目的の達成】というゴールの設定。主人公はどうなりたいのか、ということを最初に決めておかないと、ストーリーもヘッタクレもありません。
僕らのチームのゴールは「飲み会の開催」としました(当たり前だと思われると思いますが、これが大切だと思います)。

飲み会を無事開催するために、どうやって様々な「困ったこと」を乗り越えていくか。今度は個人作業でアイデアを練り、「困ったこと」を解決するサービスなり製品なりを考えていきます。ここは正直思いつきのアイデアレベルで進めます。アイデアを出すことが目的のワークショップではなく、ストーリーテリングをひと通り経験するワークショップですので。

で、なんとかひねり出したアイデアを加えた、「英雄構造」のストーリーをチーム内で発表していきます。それぞれなかなか面白いアイデアも出て、ストーリーも破綻していないものが発表されました。そして、チームから一人選んで全チームの前で発表し、酒井さんに講評してもらってワークショップは終了となります。

最後の発表の時に、サービスを軸にした、いわゆる「プレゼン調」に発表する方がいらっしゃったのですが、ストーリーとして語らなかった理由は何なのかが気になりました。どちらが正しいとかそういう問題ではないと思いますが、やはり主人公を置いたストーリーとして語っていただいたほうが感情も移入できるでしょうし、情景も浮かぶような気がしていました。

今回のワークショップでは、ストーリーの作り方が少しはわかったような気がしました。しかしインタビューはなかなか提案段階では取り入れるのは難しいかもしれないとも思います。そこで、酒井さんが仰っていましたが、WEBサービスのユーザーフォーラムなんかで「困った話」をかき集めるだけでも「アネクドート」にはなり得ると思いますので、今後のプレゼンから少しずつ取り入れていきたいと思っています。



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