2011年7月20日水曜日

HCDの理解2011[初級編VOL.4] ペルソナ・シナリオ法

HCDの理解2011[初級編VOL.4] ペルソナ・シナリオ法 に参加してきました。

毎回思うのですが、このWSはとてもハード。初めての僕らにはとにかくわからない事だらけ。どうしても上手くやろうとして、時間をかけすぎてしまったり、浅野先生に注意されたり。しかし回を追うごとにやり方というかペースには慣れてきてる気がします。

まずは座学からです。こちらもスピード感満点。あとで復習することが大前提になります。今回は割と早く振り返ることが出来ました。

ペルソナ/シナリオ法はHCDプロセスのひとつ

ユーザーは誰か
曖昧な特定では対象ユーザーの共通認識が出来ない。そんなユーザー像のことを「ゴム製ユーザー」と呼ぶ。
  • ソニーでは「若者向け」のデザインを35〜45歳までの間させない。35歳から45歳の間は自分のことを若者だと思っている可能性が高いが、現実には違うことが多いため。45歳を超えると、自分の子どもが若者になっているので自分と違うことが認識出来る。


たったひとりの為にデザイン
最大の人間に対応すると、機能が多くなりそれが障害となる。100%の人より10%の人を100%満足させる。結果、それが大勢の人を満足させることにつながる。
  • CAのキャリーバッグは昔CAのためだけに作られたものだが、今や全世界に広まり便利に利用されている。
  • ポスト・イットは聖歌隊員がしおり替わりに使い始めたものが広まった物。
  • ウォークマンはソニーの社長のために作られた物。

ユーザーは誰
狙いのユーザー像を明確にする

商品評価を行うのは人。売れる商品を作るためには、その人を知り、開発者間で共有する必要がある。

  • 不明瞭なユーザー:開発者(自分)がユーザー
  • 厳密なユーザー:ペルソナがユーザー


ペルソナが目指すゴールを決め、そこまでのシナリオを考える
Goal-Directed Design/目標主導型設計


ペルソナ手法の背景

  • 暗黙の了解をなくす
  • 外化することによって共通認識とし、ぶれないユーザー像とゴールへの道筋を作ることが必要


ペルソナ手法の利点
ユーザー情報の理解
異分野間でも共通認識を持つことができる
声の大きい人ではなくペルソナを基にユーザー評価ができる

  • ペルソナは打ち合わせに持っていく
  • 人形を使うのも良い
  • 日本人はペルソナを使うのが下手→ペルソナ/シナリオ法がダメという結論に行きやすい


ペルソナの作り方(以下は座学の内容にWSの感想も交えていきます。)
  • ビジネスニーズに沿ったターゲット層の情報が必要
  • 今まで蓄積したマーケティングデータからインタビュー対象を選定。しかし制作会社にはそのデータは回って来づらい。

1)6〜7名のユーザーを抽出し、約2時間程度の観察・インタビューを行う
  • ユーザーは自分自身の潜在ニーズを説明できない
  • 慣れのないうちは大きな視点で見るが、慣れてくると細部を見るようになり構造的な問題を発見出来ない

僕は今回の課題サイト「名古屋市科学館」のビジネスニーズにマッチするセグメントなのでしょう。インタビューを自チームと他チームの2回受けました。なので、インタビューする機会はありませんでしたが、インタビュアーの方の違いを感じられて、それはそれで面白かったです。あとから考えるともう少しこういう展開で聞いたらいいのではないか、といった感想も持ちました。

※インタビューは「なぜ?」を5回聞く!理由までしっかり聞かないとラダーアップを始めたときに在り来りな結論に達する。



2)集めたデータから重要な内容をポスト・イットに書き起こす

  • 事象をポスト・イットに書く際には単語で書かず、情景が浮かぶように理由等も含めて文章化する。

最初のうちはついつい事象だけを書いてしまいますが、他チームに対する先生の注意の声で自分たちの書いている内容を見なおして、これじゃマズイという感じに修正していきました。


3)データをグルーピングし、ユーザーのタイプに分ける。各人物像の骨格をまとめる。
  • ラダーリングをする
  • 今回はラダーアップを実行
  • ビジネスニーズがあれば、そこから落としこむラダーダウンも併用する。
  • 階層を「ユーザーの事象」「ユーザーの行為目的」「ユーザーの本質的要求価値」の3つに分ける。
  • ユーザーの本質的要求はそのままアクティビティタスクになり得る。
  • 上手くラダーアップできない場合は事象が曖昧。インタビューが聞き足りない。


カードソートの1種と考えていいのでしょうか。しっかり事象を見つめることで、本当に本質的要求が見えてきました。僕らの導き出した本質的要求は「子供と一緒に趣味を楽しみたい」「手間をかけずに効率的に子育てをしたい」「子供にとって良い親でありたい」の3つ。僕も気づかなかった親の気持ちに迫っているのではないでしょうか。


4)表現を肉付けし、一貫性のある人物像としてペルソナを完成させる。

  • ユーザーの基本情報と本質的要求がわかる。
  • ビジネスニーズがないと作れない?
  • ビジネスニーズに照らして調整。属性の近いユーザーを統合する。

ペルソナシートを作ります。しかし今回はビジネスニーズについて触れる機会がなく、僕達の判断でペルソナを作りました。
ここで感じたことは、ペルソナは上記のプロセスを踏むと勝手に出来上がるものでは無いのだろうということ。
ビジネスニーズに沿ったペルソナを能動的に作る過程で、開発者の価値観のみが反映されたものにしないようにするために、様々なプロセスを通過する必要があるのかなということです。



後日ツイッター上で浅野先生がおっしゃっていましたが、人間は1回では18%しか理解出来ないそうです。このWSを1周だけやって業務に生かせるかというと微妙ですが、参加するのとしないのでは、ものの考え方に大きな差が出るだろうと思います。本当なら来年も1周受けてさらに成熟させたいところですが、開催が危ぶまれています。もし開催されないなら残念。


その他メモ
  • ペルソナを幸せにする=コンセプト
  • 非構造化インタビュー
    「最近どう?」のような質問からラポールを形成し、有用な情報を得る手法。時間がかかる。
  • 半構造化インタビュー
    最初の質問を間違えるとすべてがだめになる
  • ユーザーを調べればOKという訳ではなく、ビジネスニーズがわからないといけない
  • 技術的シーズ=「うちにはこんな技術があるからこんな事をしたい」

2011年7月7日木曜日

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

だいぶ前になりますが「アイデアのつくり方」に続いて読みました。
以前アップした「アイデアのつくり方」でざっくり理解して、こちらで具体的な方法を、という順番で読めたので、すっと入っていく感じでした。

「天才」と呼ばれる一握りの人をのぞいて、人間はあまりに自由すぎるとかえって自由な発想をしにくいと思います。制限があったほうが焦点がぶれなくてまとまることが多いように感じますが、この本はそういった「少しだけ制限を与えてくれるもの」を多く紹介してくれています。

もちろん業務で既に使っているようなものもありましたが、方法や狙いなどを再確認する意味でも、読んでよかったです。実際に早速実務に役立てることができました。紹介されているものを全部使うのではなく、まずは自分に合うと思えるものから試していくといいかも知れません。



アイデアマンになれるかどうかは後天的
置かれた環境よりも自分の意識のほうが大事
アイデアが出るか出ないかの違いは、意識しているかどうかの一点のみ



1章 アイデアが企画になる、アイデアが企画としてまとめられる
アイデアと企画は「What」と「How」で成り立っている「何を」「どうする」をセットで考える習慣を持つ
  • アイデア・企画を考える順番を知っておく
  • デザインは「わがまま」→「思いやり」
  • 最初から相手に合わせてしまうとアイデアがショボくなる
  • アイデアとは自由奔放な発想
  • アイデアとは既存の要素の組み合わせ以外の何ものでもない
  • 少しだけ新しくても「新しい」
  • アイデアは企画の「素」であり、アイデア=企画ではない
  • 量が質を生む
  • アイデアは1行でいい
  • くだらないことも全て紙に書いてみる

アイデアをフィージビリティスタディしたものこそ「企画」
企画とは予算と準備と時間さえあれば実現できる目処が立つ計画
「企画書」に新しいアイデアが含まれていないと「新しくない」
ひとつの企画が新しいアイデアばかりで構成されている必要はない

情報が入る→アイデアを拡げる→企画にまとめる
アイデアが企画につながる頭の使い方は「拡げて絞って、また拡げて絞る」




2章 どうしたら「必要な情報」が入ってくるのか
まず、今集めたい情報は何か、何を解決しなければいけないのか、をメモする

考具1 カラーバス

  • 「今日の色」を決め、その色のものが何かを見る
  • 「見る」以外のことをする必要はなく、一度しっかり意識したという事実でOK
  • カラーバスは注目する視点をいつもと違うジャンルで絞ると発見の幅が広がることを教えてくれる
  • 色だけでは飽きるので、「形」「位置」「音」等何でもOK
  • アイデア・企画を考えることにおいては「すり替え」「言い訳」「ほんの少しの強制力」がとても力になる


考具2 聞き耳をたてる

  • 人の話を聞くことのもうひとつの効能は、他の誰かの生活をほんのヒトコマだけ共有できること
  • ちょっとだけ目を向ける、耳を立てる


考具3 ちょいメモ

  • なんとなく気になったものだけをちょこっとメモる
  • メモする効能は頭の中にあるものを外に出すことにある


考具4 七色いんこ(誰かになりきること)

  • 「考える」という概念の中に「実際に体を動かしてみる」を含める
  • 自分と違う立場・ポジションを出来る限りなりきって疑似体験する


考具5 フォトリーディング

  • 読書の定義を変えること
  • 自分にとって大事と思える情報を探す
  • 何度も目を通しておくことは大切


考具6 臨時新聞記者(現場・取材 中学生に説明できるまで理解する)

  • 課題解決のヒントを求めて現場に行く
  • 自分の実感としての知識・記憶があるかどうかはアイデアの爆発に決定的な差を生み出す
  • 分かりづらい話は自分自身にとってわかりやすい方法、エピソードで理解する
  • 分解してしまう 「分解」のあとに「選択」と「集中」
  • 現場を知っていると企画に説得力が出る、プレゼンの迫力が違ってくる




3章 展開・展開・展開 アイデアが広がる考具

  1. 普段からアイデアのネタ元を色々貯めこんでおく
  2. 目の前の課題についての特殊知識や必要な情報をさらに頭に入れる
  3. 貯め込んだ中から使えそうなネタ元や情報を引っ張り出す
  4. 引っ張り出したネタ元、情報を組み合わせてアイデアを生む

※特に1と3が大切

考具7 アイデアスケッチ(手書き)

  • 「こうなったらいいな」の形状やシーンを思い浮かべる
  • 自分が想像できないものを実態として存在させることは困難
  • タイトル1行、イラストと少しの説明を2、3行
  • 最初から珠玉のアイデアは出てこない
  • 1枚1案、30案は出す
  • 展開するときは「拡げる」ことが大事


考具8 ポストイット

  • 1枚1ネタ
  • 思い浮かんだものをそのまま書く
  • 書いたポストイットは机や壁に貼る 張り方は事由
  • 「アイデアのネタ」と「アイデア」は別物
  • アイデアを考えることに「正しい順番」はない
  • アイデアを思いついたらすぐアイデア書きに入る
  • 行きつ戻りつの試行錯誤がない企画はパワーが無い


考具9 マンダラート

  • すこしばかりの強制力が働くと、頭が必死に回転を始める
  • 普段の生活で積み重なった記憶を引っ張り出し、組み合わせるだけで新しいアイデアが生まれる
  • アイデアに遠慮は厳禁、少し違和感があっても書いておく
  • アイデアが押し寄せてきそうならそのままもう一段階マンダラを開く。手順にこだわっている暇はない
  • アイデアを出すことと、選ぶ、判断することは別物
  • すでに頭の中にあるアイデアを引き出すことができれば新しいアイデアを生み出すことは簡単になる
  • アイデアが面白いかどうかは、組み合わせの方法より組み合わせる要素をどれだけ多彩に引き出せるかが重要


考具10 マインドマップ

  • 自分で紙に落としていく過程を通じて本当に理解できるようになる


考具11 アイデアスケッチ(PC)

  • タイトル+3行アイデア
  • 複製した画面を上から書きなおしていくこと
  • アイデアを考えるときは「芋づる式」や一見関係の無いことがミックスされたりぶつかり合うことがゼッタイに必要
  • 拡げて、まとめる


考具12 連想ゲーム

  • 連想ゲームの目的は頭の中にしまい込まれた言葉を引き出すこと
  • まずは自分好みのアイデアでOK


考具13 オズボーンのチェックリスト
アイデアのヒント・要素は創りだすのではなく、探す・見つけるということ。「オズボーンのチェックリスト」はアイデアを生み出すために必要な「要素の組み合わせ方」の基本パターンが網羅されている
  • 転用したら?
    現在のままでの新しい使い方は?
  • 応用したら?
    似たものはないか、真似できないか
  • 変更したら?
    意味、色、動き、匂い、形を変えたらどうなる?
  • 拡大したら?
    大きくする、長くする、頻度を増やす、時間を延ばすと?
  • 縮小したら?
    小さくする、短くする、軽くする、圧縮する、短時間にすると?
  • 代用したら?
    代わりになる人や物は?材料、場所などを変える?
  • 置き換えしたら?
    入れ替えたら、順番を変えたらどうなる?
  • 逆転したら?
    逆さまにしたら、上下左右、役割を反対にしたら?
  • 結合したら?
    合体、混ぜる、合わせたらどうなる?

困ったときの辞書がわり。
アイデアのつくり方は至ってシンプルで、今と昔で違うのは方程式に入れるデータ。データを変えるだけなのでアイデアが尽きることはない。

考具14 ブレーンストーミング グループで使う考具
【4つのルール】

  • 批判しない
  • 自由奔放な発言を歓迎する
  • 質より量を求める
  • 他人のアイデアに便乗する



  • ブレストはまったく別の視点を盗むチャンス
  • ブレストは数の勝負。競争感覚を忘れない


4章 企画 アイデアを企画に収束させる

アイデアなくして企画なしだが、実務においてはアイデアは企画になっていないと使えない


考具15 5W1Hフォーマット

  • まずアイデア有りき「わがまま→思いやり」
  • 新しい企画は予定調和の中からは生まれない


考具16 タイトル

  • 企画にタイトルを付ける


考具17 ビジュアライズ

  • 「絵にならないもの」は企画として成立しない
  • できるだけ細かく丁寧に想像してみる
  • やりたいことをどれだけ明確にできるかが成功するかどうかの判断基準になる。


考具18 マンダラート

  • マンダラートを主体的行動軸と取り巻く環境の軸に分けて使う


考具19 企画書

  • 企画書で肝心なのは「原稿」→「原稿」の構成に80%の時間をかける
  • 企画書屋にはならない
  • タイトル、5W1H、読んだ人がビジュアライズできるか
  • 相手の頭の中で企画をビジュアライズさせたい
  • 中心ツールは「言葉」→「言葉の力」を磨くこと




5章 行き詰まったとき
なにより大切なのはアウトプットし続けること

考具20 アイデアマラソン

  • 自分が産み出したアイデアをノートに書いておく
  • 通し番号を振り、スタートしてからの日数とのギャップを計算
  • 思いついたアイデアは誰かに話す


考具21 問いかけの展開

  • 与えられた課題を変えてみる、ズラしてみる
  • アイデアに詰まったら質問、問いかけを拡げる




6章 自分なりの考具
インプット系考具
「既存の要素」をどれだけ発見できるか、インプットできるか

アウトプット系考具
アイデアを展開し、企画へ収束させるためのツール


  • 手書きがアイデアの基本
  • アイデアのヒントは至る所にある。発見できるかどうか、探しているか、見つけようとして問いかけているか、がポイント。


終章 頭の動き方のシステム化こそ「考具」
「私は◯◯◯◯◯な人」の◯◯◯◯◯を埋める=自分のゴールを明確にすること
ゴールイメージを決める=行き先がわかれば何が必要かもわかる

成功するためのノウハウは明らかなのに、実際に行動にうつす人は1%しかいない。だから成功するのは簡単。