先日、UX名古屋主催・浅野先生によるUX&HCDセミナーに参加してきた。
浅野先生のセミナー&ワークショップは随分久しぶりだった。昨年もHCDのセミナー&ワークショップには少しだけ参加したが、様々な理由でちょっと意欲が減衰していた。しかしやはり得るものが多いと思うし、今年は浅野先生が教えてくださるので、できるだけ参加しようと思っている。
まずはサービスデザインとUX、HCDについて大きな視点で概論を話してくださった。その後カスタマージャーニーマップ作成のワークショップ。
久しぶりに聞くお話はやはり少しアップデートされている部分もあって、非常にわかり易かったし、以前よりわかるようになってる自分も確認できた。血肉になっている感じ。
参加者としてありがたいこと
浅野先生の講義は、スライドをA4に6枚ずつ面付けしたプリントを配布してくださる。これが非常に、非常にありがたい。他のセミナーなんかだと「後で配布するんでメモはとらくていいですよ〜」と仰るスピーカーの方が多い。しかし僕らは写経がしたくてメモしてるんじゃなくて、単純に感想や疑問をメモしたいだけ。「後で配布〜」だと、どこの話に関する感想や疑問かというのを把握するために、必然的にサマリーをメモしなければいけないので、メモ量が増え、結果的にずーーーっとタイプしているということになってしまう。
正直、これは参加者としてはもったいない。
その点、先生のようにスライドを当日紙で配布してくださるとメモ量は激減。その結果講義に集中できる。
だけど確かにスライドのプリントはお金もかかるし、手間もかかるので大変。
であれば、テキストによるアウトラインでいいから事前もしくは当日に欲しい。これをしないのは、なぜだろうか。こういったところを見ても、先生の講義は経験値がぜんぜん違うのだろうなと思う。
浅野先生の講義
サービスデザインとは
いつもお話される「橋をデザインするのではなく、川を渡るシステムを作れ」がすべてを表していると思う。またフォードの話もしてくださる。「それまで馬車に乗っていた人に、何がほしいか聞いたら、もっと速い馬車がほしいと答えるだろう」これらは、僕が社内でもよく話している「お客さんは広告を出稿したい訳じゃなくて、集客したいんだよ」というのと同じだ。基本だけど。
また僕らが普段行なっているモノづくりは、サービス(コト)のために行われる。そしてそれはユーザー体験(UX)を提供するためである。
ある人が言った、モノからコトへ、そしてヒトへ、という順序だと思う。
ユーザビリティからユーザー体験へ
この辺りのお話で印象に残ったのは、下記の分類。- 予期的UX
- 一時的UX
- エピソード的UX
- 累積的UX
これは一昨年だったか、安藤先生によるサービスデザインの講義で取り上げられていた。これは非常に大切な考え方のように思う。人は、最初からユーザーなわけではない。
そして、必ずしもゴールへの到達だけがUXではなく、プロセスや状況にもUXは存在する。というか、今起きているすべてのことがX(エクスペリエンス=経験)だと思う。僕がこうしてMacを使ってアウトラインソフトでブログの概要をまとめているのもその一つ。そこをユーザーとしてくくることで、サービスに対する経験としているのだと思う。
HCDでは、良いUXにはユーザービリティがベースにあるという考え方だそうだ。しかし使いにくさもUXであり、それが良いUXにつながるケースも往々にして有る。
そしてスマートフォンの時代
いま最も人口の多い地域であるアジアやアフリカでは、PCを持ったことがない人々がスマートフォンを持っている。そしてその普及率は日本の比ではない。iPhoneも全然いないのだそうだ。そして日本でも(特にサービス提供側の人間は)PCからスマホという流れがあるが、20歳前後から下の世代であるデジタル・ネイティブたちにはPCを持っていない人が増えている。この世代は我々とはリテラシーが違う。デジタル・ネイティブとは言えない僕も、テレビで気になることがあればすぐにスマホで調べるようになった。
ただ、ユーザーの文脈に合わないサービスは使われない。そして日本の成熟した社会は、人々が驚くほど多様化している。だから、みんなが使うサービスは生まれにくい。
また、スマホの中では完結しないサービスにどんどん進化している。
韓国の駅のホームでの買い物(参照元:ソシエタ|駅がスーパーマーケットに! カンヌを制したTESCOが韓国で仕掛けた秘策とは)
我々は、ユーザーの体験をデザインすることが大切で、そのためにユーザーのことを知らなくてはいけない。そして、HCDの手法を利用するとより良くユーザーのことが分かるようになる。HCDはあくまで手法であり、学問ではない、と思う(なんか周囲に誤解している人がいる気がする)。
HCDプロセスについて
概論ということで、駆け足で説明してくださった。個人的なことを言えば、HCDプロセスについて到底身についたとは言えない。業務に取り入れた経験もあるが、それが正解かどうかもわかりづらい。しかし、何もやらないよりは、知見が貯まるという意味でも良いと思っている。ワークショップ
今回のワークショップでは、カスタマージャーニーマップを作成した。スターバックスのものが有名。(参照元:Little Springs Design | Blog | Improving the Starbucks Experience)
まずは分解するところから始めるという意味で、いま勉強している分野と近しい部分もあり、非常に面白かった。
先日あるアプリを企画した時にも累積的UXを意識することで、その中のどの部分をアプリで担うかが明確になったし、感情の起伏を取り入れることにより、容易にサービスの問題点を共有することができる。
それと、先生も仰っていたが、やはりアイデアや気付きは体を動かすことによって出やすくなると思う。解決策は出にくいのかもしれないし、企画に落とすときは机上で唸る時間も多く必要だと思う。しかしその元となる部分は、複数人でワイワイと進めていくのが良いのではないだろうか。 というか、その良さは実感しているわけだから、社内でも取り入れて行きたいところ。
まとめ
やはり浅野先生のセミナー&ワークショップは非常にわかりやすいし面白い。そして先生の名古屋でのHCD関連セミナーも4年目ということで、ある程度わかっている人も出てきていて、迷ってしまっているチームは少なかったように思う。以前から言っているが、HCDの手法は、少しワークショップに参加したからといって身につくものではない。だけど、知識として知っておくと現場で活かせる場面はそこかしこに出てくるように思う。しかも、他ジャンルのことを学んでいる時に点と点が線になることが往々にしてある。
少し前に、HCDの前は何中心だったの?というポストを見たけど、プロダクトや開発者中心設計な製品が多かったんだと思う。でもヒットしてる製品は、割りとユーザー中心になってたから、僕らの目に触れていないだけかもしれない。HCDってそういうものを減らすためのものなんじゃないかと。